日本の食品が海外で大人気だそうです。大手メーカーのスナック菓子から地方の銘菓、ラーメン、スパイスミックス、焼肉のたれなど、まさに何でもありといった様相を呈しています。世界各国に日本メシのファンが急増しているようですが、特に米国、Amazon.comの売れ行きランキングにも日本の食品やお菓子が数多くランクインしており、駄菓子や日本のB級グルメを専門に扱う越境ECのプレーヤーも増えてきているようです。ただ困るのは物流。越境ECに手慣れたプレーヤーでも一度や二度は、通関で痛い目にあったことがあるのではないでしょうか。
そこで今日のテーマは、ずばりアメリカ向けの食品物流です。アメリカに食品を輸出する場合のコツを3つご紹介いたしましょう。
1.事前通知(Prior Notice/PN)を取得する
米国に食品を輸出する際には、FDAに事前通知することが必要とされています。事前通知は、
- 差出人
- 受取人の住所氏名
- 食品名
- 食品製造者
- 食品が製造された国
- 量
- 配送業者
- 配送上番号
などの項目をFDAに事前に登録し、承認番号を取得します。この番号を事前通知番号といいます。航空便を使って輸出する場合、到着の4時間前までに事前通知は済ませておかなければいけません。取得したら、その番号をインボイスに記載します。
事前通知を行うためには、FDAのサイトから無料で取得することもできますが、英語だらけで少々閉口します。下記のような専門業者のサービスを利用する方法などがありますので参考にしてみてください。
参考: レジストラ・コープ社(英語サイト)
−Prior Notice Express
https://www.priornotice.com/
尚、日本郵便のサイトでは、EMSで配送する場合、個人利用(商用としない)で食品を送る場合、事前通知は不要となっていますが、商用の場合は越境ECであっても必要ですので、取るに越したことはありません。
参考: 日本郵便 国際郵便ご利用の流れ
−米国への食料品発送について
https://www.post.japanpost.jp/int/use/usa.html
2.インボイスの作り方
インボイスを作る場合、輸送業者のフォーマットではなく、食品の輸送に合致したフォーマットを使って自分で作成します。その際、ポイントは6つあります。
①輸出者を法人にしないこと
FDAでは、小売業者又は配送業者が個人に発送する場合はFDAの規制の対象となると定めています。
②次の2つの文言を記載すること
A gift for personal use with no commercial value, value for customs purpose only.
Certifies that none of the above-listed products have ever been refused entry to any country.
③下記の項目を各々の商品について書くこと
- 商品名
- 個数
- 単価
- 金額
- ネット重量
- 製造者
- 製造工場の住所
*「ネット重量」「製造者」「製造工場の住所」は、通常の輸出の際のインボイスではあまり見かけない項目ですが、必ず記載します。
④Prior Notice 番号を書いておくこと
⑤出荷日を書いておくこと
⑥送り状番号と配送業者名を書いておくこと
*インボイスのサンプルです。参考にしてみてください。
3.送れない商品があることを知る
食品を規制するお役所はFDAだけではありません。
例えば肉類。牛肉や豚肉、鶏肉などの家禽類についてはUSDA(米国農務省)も厳しく関与しています。生肉だけではありません。肉由来の製品、例えばハムやソーセージもそうです。油こってりの豚骨ラーメンは成分によってはUSDAに規制に引っかかったりもします。
日本酒などのアルコール類は、FDAとは別に、TTB(アルコール及びタバコ税および貿易局)の規制も受けます。アルコールを米国に輸出する場合は、FDAとTTB、両方にお伺いを立てる必要があります。またアルコールに関しては、郵便での輸送が禁じられていることにも注意が必要です。
そのほか、発がん性物質などについてはEPA(米国環境省)が、食品の表示成分、健康強調標示や広告についてはFTC(連邦取引委員会)などといった役所が幅を利かせています。
パッケージにキャラクターが描かれている場合、商標権侵害の問題の可能性があります。
冷凍食品や液体物など、輸送業者の輸送約款に抵触するものもあります。
しかしこれらは「米国で販売されるもの」を米国に輸入する場合の規制が多く、個人間での取引に対しては、その規制もぐっと緩やかになります。
ただそうはいっても、送れないもの、あるいはさまざまな規制に縛られて結果的に輸出が難しいものがあることを理解してください。そういう意味では、事業を始める前にまずは専門家に相談されることをお勧めします。
*確認が必要な食品
- 肉由来製品(ソーセージ類、缶詰類、ラーメン、プラセンタ系の健康食品など)
- アルコール(甘酒を含む)
- 生鮮品(特に魚類、果物)
- 冷凍食品
- 飲料(ワレモノ)
- アニメなどのキャラクターが使われているもの
その他、賞味期限にも十分注意が必要です。例えば、Amazon.comのFBAを利用する場合、入庫時に少なくとも半年以上の賞味期限が残っていなければいけません。そして、入庫できたとしても、賞味期限の残存期間が59日を切ると、返送の手続きをとるか廃棄処分となります。
AmazonのFBAなどを利用する場合には、十分な賞味期限を残しておくようにしましょう。
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