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14. はじめての日本酒輸出

アメリカや欧州をはじめとして、世界的に日本のお酒がブームとなっています。日本酒は言うに及ばず、シングルモルトウィスキーやワインも世界のコンテストで優勝するなど、その勢いはすさまじいものがあります。国税庁の資料によれば、この10年で日本酒の輸出量は4倍近くになっているとのこと。
そんな追い風の中、「日・EU経済連携協定」にて日本酒とワインの関税が即時撤廃されたことで、ヨーロッパ向けの日本酒の越境ECにチャレンジする人が増えてきました。
今日のテーマはズバリ「はじめての日本酒輸出! 免許・税金・ラベルの基礎知識」です。

1. 免許

越境ECにおいて日本酒を販売するには、日本の酒類販売の免許が必要です。 酒類販売免許には、「一般酒類小売業免許」、「通信販売酒類小売業免許」そして「輸出入酒類卸売業免許」の3つがあります。
越境ECでの販売だから「通信販売酒類小売業免許」、いや海外向けだから「輸出入酒類卸売業免許」と思われる人が多いようですが、正解は「一般酒類小売業免許」です。
日本国内で酒類を取り扱う場合には、「小売販売」の免許を持たない人に売る場合は「一般酒類小売業免許」もしくは「通信販売酒類小売業免許」のどちらかが必要になります。
ただ、「通信販売酒類小売業免許」はあくまで日本国内での販売免許なので、海外向けにECを使って個人に販売する場合には「通信販売酒類小売業免許」ではなく、「一般酒類小売業免許」を取得する必要があります。
ちなみにレストランへまとまった量を販売する場合、「輸出入酒類卸売業免許」が必要ではと考えがちですが、酒税法ではレストランへの販売も小売りと定義しているので、「一般酒類小売業免許」を取得してあれば大丈夫です。
なお、酒蔵自身が輸出者となる場合には、これらの免許は必要ありません。

2. 税金の処理

日本酒の輸出は酒税(日本側)・消費税・関税・付加価値税(VAT)・酒税(欧州側)の5つの税金に対応する必要があります。今回の「日・EU経済連携協定」のおかげで関税についてはなくなりましたが、そのほかの4つの税金まで撤廃されたわけではないので、個別に対応していきます。

(1) 酒税(日本側)
酒税法では、酒類を製造場から移出した時点で一定の酒税がかかるとされています。ただし、輸出を目的として酒類を製造場から移出する場合には、所定の手続きを踏むことで酒税が免除されます。なお、この手続きは酒蔵が自ら輸出する場合と、輸出業者が輸出する場合では異なりますので注意してください。
詳しくは国税庁のWebサイト「酒類の輸出免税等の手続について」をご参照ください。

(2) 消費税
日本酒の製造の仕入れにかかった消費税は、他の輸出取引同様、還付されます。確定申告時に確実に処理できるよう、輸出した日本酒に関して支払った消費税(原材料や物流費、容器の代金などに対する消費税)を整理しておきましょう。

(3) 付加価値税(VAT)
欧州での輸入通関の場合にかかる付加価値税(VAT)については、原則としてすべての取引においてかかってきます。その上20%~25%と高額なため、個人の購入者にとってはかなりの負担となります。取引に際してこのVATをどちらが負担するのか、サイト上で明示しておくことが重要です。

(4) 酒税(欧州側)
欧州には日本と同様に酒税があり、輸入時に納付しなければいけません。一例として、フランスの酒税を挙げておきますので参考にしてください。

① アルコール度数1.2%超、15%以下の日本酒:3.77ユーロ/100リットル
② アルコール度数15%超、22%以下の日本酒:188.41ユーロ/100リットル
③ アルコール度数1.2%超、22%以下の日本酒:188.41ユーロ/100リットル

このように「日・EU経済連携協定」が発効された後でも、いまだに日本酒の輸出の際は付加価値税と酒税(欧州側)が課税されます。日本やアメリカでも同様ですが、お酒に関しては財務省が取りまとめていることが多いため、税金に関してはかなり細かく規定されています。

3. 表示ラベル

欧州向けの日本酒の輸出に際しては、ラベル表記についても細かな規定があります。
2014年12月から「消費者への食品情報の提供に係る欧州議会及び理事会規則(EU) No 1169/2011」が適用され、適正なラベル表示が義務付けられました。表示に使用する言語は、EUの公用語であれば複数の記載も可能ですが、当該製品を販売する国の公用語を必ず使う必要があります。

① 表示が義務付けられている項目
② 販売製品の名称(品名):
③ アレルギー成分
④ 正味容量:
⑤ 賞味期限:
⑥ 保存・使用条件:
⑦ 製造者、ボトリング業者またはEU域内に居住する販売者のいずれかの名称、あるいは会社名と住所
⑧ 原産地または発送地
⑨ アルコール度数:
⑩ ロット番号:

ラベル表示のルールは極めて厳格です。輸出に際しては、欧州向けの食品に関する専門家のアドバイスやコンサルを受けることをお勧めします。

日本酒を越境ECで取り扱う際はこの3つの項目「免許」「税金」「ラベル」についての準備が必須となり、専門家のアドバイスは欠かすことができません。
よいパートナーを見つけて、それなりの時間(3か月程度)をかけながら準備を進めることが、結局は成功への早道となることでしょう。

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